Atradium

CC-LICENSE BY-NC-SA クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
copyrights 2012 Atradium

美しき本性を魅せる悪魔

悪魔の通説と逆説

強い力を望む物の前に姿を見せるという悪魔。
対価を引き渡す契約を結ぶことで、ヒトは望んだままの、あるいはそれ以上の力を手にすることができるという。
しかし力と欲望に埋もれた者は皆、すでにヒトとは言えぬ姿となっていく。
執着が生むのは願いを叶える力ではない。

面白いのは、契約を重ねヒトの道を踏み外した者を再び連れ戻してくれるのもまた、悪魔であるということだ。



《コントラクトイーター》


この悪魔が求めるものは「契約」という事実のみだ。
自身が悪魔と交わしてきたすべての契約をこの悪魔との契約の糧に差し出し、新たに望みを叶えてもらうことができる。


この悪魔は、ヒトが忘れてきた大切なものを象る性質を持っている。
契約を多く交わし、力への渇望に自信を喪失したものが見る姿とは、おそらく悪魔の容姿とは思えないほど美しく清いものだろう。
美しき女神を前に、ヒトが求めたがるものとは何か。答えはいつもひとつに決まっているらしい。
それは表の陽のあたる道を歩く者が当たり前に抱く何かで、失って初めて気づく存在であるとのこと。


コントラクトイーターが契約を食すのにかかる時間は、その重さに比例するが、平均して丸一日。
おおよそ一日にひとつの契約を喰らい、契約者は少しずつ元の姿を取り戻していくだろう。


この悪魔が最後に喰らう契約は、自身との契約である。
契約を糧に生き長らえる悪魔の餌がなくなれば、その悪魔はやがて消えてしまうだろう。
悪魔が消えたとき、契約者自身もすべてのしがらみから解き放たれて無に還ることができるのだ。


それが最高であるか最悪であるかは定かではないが、
どこかのタイミングで「初心」を思い出したなら、その時抱いた感情こそが答えそのものなのだろう。
ただし一度穴の開いた心の修繕はたとえ悪魔の力によって行われたものであっても完全でとは呼ばれない。
そう、その針と糸を握ったものが「悪魔」であることを忘れてはならない。