その果物はだれもが口を揃えて「おいしい」と謳歌する。
味覚を持たない種族でさえ、一口かじると感動のあまり気絶するとさえ言われている。
この世の中にはそんな魅惑のスウィーツが隠されているらしい。

「サファリスウィーツ」

伝説の果物の名だ。
誰がそう呼んだのか、今までに誰が食し感想を残したのか、いずれも定かではない。
ただただ誰もの口に合う、恐ろしいほどの一品であると、そう伝えられている。

憶測だが、この名前は収穫できる場所に由来しているのだと思う。
サファリ。
日中は猛獣が、夜間はエフィルが徘徊し、かつ非情なまでの温度差が体力を奪う過酷な土地。ここでなら解明されていない謎も多々残っているうえ、これからも容易く解明されることはないだろう。
となれば伝説となるには十分すぎる土地環境だ。

しかし困ったことに、見た目、味（評価ではなく、酸味や甘味といった表現）はどこにも記述が存在しないため、たとえ辿り着いていたとしてもそれがサファリスウィーツであるかどうかの判断ができないのである。
もし調査に出向くのであれば、普段はまったく気のあわない、舌の狂ったもの同士がつるんでいると発見に気づくことができるかもしれない。あなた方の精神に異常さえきたさなければの話だが。

そしてもし、サファリスウィーツを見つけることができた時は、悪習を断ち切ってきちんと味に関するレポートを作成していただきたく願う。