Atradium

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ガルルの筆技

北国育ちの旅人がよく使う比喩に、「ガルルの筆技」というものがある。


ガルルは北の交戦的なケモノの一族に生まれた、心の優しい青年だった。生まれつき体があまり丈夫でなかった彼は、仲間が戦いに行くのをいつも一人で見送り、一日のほとんどを一人で過ごすか、住処の森の近くの泉で魚とおしゃべりして過ごしていた。
あるときガルルの一族の元に、これまで戦ってきた敵の連合軍が、因縁をつけて森に火を放ち、長きに渡って続けられてきた戦いを非道な手段で終結させた。
泉にいたガルルだけが難を逃れて生き延びたものの、撤収する連合軍の下っ端に見つかり捕らえられてしまった。
捕まる前に泉に住む賢い魚の精が、捕まってからの過ごし方を教えてくれていたから、彼は黙ってひたすら文を綴った。魚から聞いた旅の話を、一字一句間違えずに、ひたすら書き続けた。そうして彼は物書きとして認められて、牢屋から出してもらい自由を手にした。
自由になった彼は今度は連合軍が行ったひどい仕打ちをありのままに書き連ねて、そのとき連合軍が敵対していた別の国の大臣に届けた。
ほどなくして体の弱かったガルルは亡くなってしまったが、仇を取ることと真実を打ち明けて不正を暴くことを達成した。


そんな経緯からきた言葉。
今では信念を貫く為の長い忍耐や、自身の道から切り開ける最良の未来を明確に頭に入れて行動するという、大変たくましい意味の語として利用されている。
時折ペンは剣よりも強しと混同されるが、異なるので気をつけよう。