Atradium

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雪の夜の夢の宅配者

願いは煙とともに姿を変えて


世界中で親しまれている、旅人の、特に子供たちに人気な伝承の代表的な例としてあげられる「シンタクラースのプレゼント」
これを知らないヒトは恐らくいないのではないだろうか?
では、プレゼントの送り主シンタクラース氏がかつて冒険者であった頃の物語を、君たちは知っているだろうか



敏腕のトレジャーハンター

シンタクラースは新天地の開拓や人の依頼には一切耳を貸さず、隠された財宝や秘密のアイテムの収拾をひたすら続ける孤高の冒険者だった
彼が発見して持ち出した秘石「レッドノーザー」と「ライトスレッジ」は悪魔を閉じ込めていて、それが解き放たれたが故に彼の相棒の鼻が赤く染まったことは歌にもなった(この出来事が後に彼の行動範囲を押し広げ、更なる活躍の功績を残すこととなった)
「ダメタル」は現代の剣の鋳造には欠かせない貴金属であるが、これを生み出す「マザーメタル」の鉱山を発見したのもまた彼である


それから鼠小僧へ

歴史的に名高いハンターである彼が、どのようにして「配る」側へ立ち直ったのか
その背景にもまた彼のトレジャーハンティングの影があった
当時追い求めていたのはあらゆる地にバラバラに隠され、そのすべてを集めることを成した暁には、更なる秘宝「エアロプラチナ」を手にすることができるという空賊が隠した255枚の銀貨
長年の探求の末ようやく半数を集めた彼であったが、あるとき空賊の子孫と出会い、とある事実を告げられた

ーー宝を追い求める旅人よ、欲を求めすべてを手にしたとき、汝に与えられるは終着地のない虚無のみ
ーー更なる探求を追うなれば、汝の集められしその宝を、夢を追いし新たな旅人に預けよ
ーー彼等が汝と肩を並べる逞しき旅人に育ちしとき、彼等は汝の知り得ない宝を返還するだろう
ーーそれが我らが隠した秘密の銀貨
ーー独りではなし得ない夢を掴むために編み出した我らが最大の宝

シンタクラースはこれをどう解釈したのか、それ以降自らのコレクションをヒトに譲り、代替として冒険者を夢見る子供たちの求める物品を要求し、そして年に一度の雪の日の夜に、それを配って回っているのだという